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地球環境について本気で考えるブログです。
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いやーなんかもう久しぶりすぎてよくわかんないですね!サンゾロの!火を灯せ!!はたらきたくないでござるううううううう!!!こないだ仕事で移動中に某R子さんを見かけてドキドキしました。

そんでね、ふと思い出したので何年も前に書いたおじいさんじの孫サンジとゾロがおじいさんになったときの話を発掘しておいておきます。ほんとはサイトにあげようとおもったんですがなんか・・・めんどくさくて・・・。










まぼろし


近頃はとみにむかしのこと、ゾロといたときのことを思い出す。
ここでよく並んでだらだらしたなとか、だらだらしてるうちにゾロが肩によっかかって眠ってしまって柔らかな寝息が耳元をくすぐって、若かった自分は色々たいへんだったろうけどどうやって我慢したっけなとか。
一緒にいのはごくごく遠くのわずかな時間、腹に大きな悔しさを抱えて彼がこの家を出ていって何十年も経った。
彼が自分の目的を果たしたらしいことも新聞で読んで知った。
きっと戻ってくるだろうと期待するけど、もしかしたら自分のことなんか忘れてるかもしれないし、知らないうちにくたばってるかもしれないし、自分だっていつのたれ死ぬかわからない。
それでも会えたらおもしろいと妄想ににんまりしながら、なんにもないような日々がふわりふわりと飛んでくのを見つめるのは嫌じゃない。
今日もまた、あのころと外観を変えていないこの家の、縁側に腰掛けてつれづれの想いにぼんやりしていたら、インターホンが鳴った。
連絡なしに突然門前に人が立つの珍しい。
回覧板でも来たかなと、そのまま足元のつっかけを履いて庭を横切る。
いくつかの梅の芽が見えている以外は淋しい庭だ。
黄色っぽい芝生、濃い緑の山茶花の葉が、正午すぎの日の光に白っぽくかすむ。
それらはまるでまぼろしのように映り、うつろう。
 
「はいはい、ちょっと待って・・・」
言葉尻が切れた。
門の前に立っているのは待ちわびた人、本当にまぼろしだろうか。
あの頃のあのままの姿でそこにいる。
働き疲れた心臓がぶっ壊れるんじゃないかというほど勢いよく波打つ。
同時にどこか足許がぐにゃりとゆがむような違和感、今は脳溢血とかなってる場合じゃないと、頭のどこかにかすめた。
言葉をなくしたサンジに、その人は躊躇なくはきはきと口をきく。
「こんにちは。祖父の、ロロノア・ゾロの言づけを伝えにきました」
それはあの頃のゾロよりも随分と高い、女の子のような声だった。
 
もしかしてもしかして今、ゾロに出会った祖父の状況なのか。
とか思いついたらなんだか彼の年若い孫の訪問にうきうきした。
それと同時にもやもやとした不安が腹のあたりにわだかまる。
彼にそっくりの孫がわざわざやってくるからには、なにか理由があるだろう。
例えば本人がもうこの世にいないから来られない、とか。
そう考えると、うきうきがしゅんと萎む。
あの男があっさりと死んでしまって、それを孫に伝えに来られるなんてつまらない。
長生きして損した。
とりあえず部屋に上げてお茶の用意をする。
台所の暖簾の影から、茶の間の様子をちらりと伺えば、無表情のままでぴんと背筋を伸ばして正座していた。
かと思えば、誰にはばかることなく顔の全部が口になるのではないというくらいの、大きな欠伸をした。
とても亡くなった祖父の言葉を伝えに来たなんて緊張感を持ち合わせているようには見えない。
そう自分を宥めて、もう一度そちらを見る。
「・・・ん?」
あんまりよくゾロに似ているからそればかりに気がとられていたけれども、男というには華奢すぎるし顎の線が繊細だ。
我ながら気が付くのが遅いのだが、よくよく見たらその子は女の子だった。
サンジは視力には結構自信があったのだが、とうとう目までやられたかとがっくりきてしまった。
だいたいゾロに似ているとおもったのもあやしい。
髪の色はゾロとちがってはっきりとした黒色だし、顔立ちだって大分違っている。
ただ自己弁護すれば、サンジがはじめて見たゾロは心細そうでどこか儚げで、幼い少年のような印象を受けた。
それから、ぼやっとしているようなしっかりしているようなあやういような、不思議な雰囲気が同じなような気がした。
ゾロの孫だという彼女は、一体何を伝えに来たのだろう。
胸がはやり、みっともなく手が震え、急須に葉を入れすぎるし、やかんの熱湯が手に少しかかった。
だいぶ渋い緑茶になってしまって入れ直そうかと迷ったが、あまり待たせるのも悪いのでやめた。
気のきいたお菓子などもないので、とりあえず漬け物を用意してはみたものの、若い女の子のお茶うけに出すには落第点だろう。
じじいの一人暮らし丸出しで、なんだか気恥ずかしい。
茶の間に入る前にもう一度彼女の様子を見ると、正座の姿勢を崩さずに落ち着き払っていた。
半世紀くらい長生きしてるくせにこちらばかりが緊張してそわそわしてあわあわして阿呆のようだ。
「まあお茶でも」
「あ、どうも」
女の子は短く答え、湯呑みに手を伸ばした。
その返事のそっけなさや、清潔で怜悧な面差しが、サンジの知っている彼によく似ている。
孫娘を寄越すなんて、本人はどうしたのかと、
『ゾロはどうしている?』
とかなんとかスパッと男らしく切り出したいけど、ゾロのこととなるとなんとなく年甲斐もなくもじもじしてしまっていけない。
ゾロの記憶は若いころの記憶で、そこではゾロはもちろんのこと、自分だって年老いていない。
ほんの一年と少しを一緒にすごした、茫漠とやさしい時間であった、もしそれが夢まぼろしであったと強く言われたら、そうかもしれないとおもってしまうような。
 
「このお漬け物おいしいですね」
彼女は箸で手のひらに漬物を一切れのせると、そのまま口に入れてとてもいい音でポリポリやっていた。
「ご自分で漬けられたんですか?」
「ああ、うん、うちで作ってる」
「そうなんですか」
もう一切れ、ポリポリいう音だけがしんとした六畳間に響く。
わーなんじゃこりゃー。
気まずくって気まずくって、できることなら髪をかきむしって叫びたかった。
最も、サンジの頭はすっかり禿げ上がり、左目すら眼帯で隠すような有り様なので、それは物理的に不可能だったけれども。
「・・・よかったら少し、持って行くかい?」
「いいんですか?」
彼女の表情はあんまり変わらないけど、少しだけうれしそうに見えないこともない。
ゾロも表情の読み取りにくいやつだったけど、この子はもっとわかりにくい気がする。
それとももう若い女の子の気持ちなんかわからないのが問題なのか。
「こんなものでよければだけど」
「ありがとうございます。祖父もきっとよろこびます」
「そう」
返事をしたあとで聞き捨てならないことを聞いた気がした。
というか、それが本題なのではなかったのか。
「祖父?」
「ええ」
「・・・ゾロ?」
「ええ」
「生きてるの?」
「はい」
なんだかどっと疲れた。
早く言ってくれればよかったのに、無駄にたくさん心臓を働かせて老体に響いたらどうしてくれよう。
彼女はポリポリいいながら、
「明日か、明後日くらいに祖父がうかがうとおもいます。ゾロったらもしかしてあの家にサンジさんがいなかったら怖いから見て来い、なんて言うんですよ、えらっそうに大剣豪なんかやってたくせに意気地がないですよね」
サンジは声も出なかった。
「あ、私、くいなっていいます」
「そう、よろしくねくいなちゃん」
サンジがいろいろの想いに力なく微笑むと、彼女ははじめて照れたように肩をすくめて笑った。
その微笑みは、ゾロに似てるんだか似てないんだかもうわからない。
ただ早く、今のゾロに会ってみたかった。
どうなってるのか全然想像つかなくて、わくわくする。 
 
それからここの近所では、じいさん二人が仲良く並んで歩いているのとか、それに一人の女の子が加わっているのがよく見かけられるようになった。
三人には笑顔が絶えず、まるですてきな物語のラストシーンのようだった。
まぶしい太陽に目がかすんでも、それはけしてまぼろしではない。
「・・・ちゃんと帰ってきたぞ」
「ああ」
まぼろしではない確証。
刀を強く握りすぎて豆だらけの手と、しわだらけの手は、たまにこっそりと繋がれて互いの経てきた月日と、ただ互いの存在を確かめ合っている。
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